青少年社会環境対策基本法案に対する会長声明

参議院自民党がまとめた青少年社会環境対策基本法案は、青少年の性的な感情を著しく刺激したり、暴力的な逸脱行為又はその他不良行為を誘発する社会環境を排除するため、内閣総理大臣又は知事に対して勧告権限を与え、勧告に従わない事業者に対しては、その名前を公表することができる旨定め、また、メディアを含めて事業者に対しては自主規制のための協定・規約の締結義務を課し、これを内閣総理大臣又は、知事に届け出るよう義務付け、同時に内閣総理大臣又は知事がこれに指導・助言できる権限を付与する旨規定している。自民党は、このような内容の法案の上程を検討していると伝えられる。


たしかに、テレビ・新聞・雑誌等のマスメディアの流す情報の一部には、とくに、性・暴力などをめぐって、青少年の成長に重大な悪影響があるとの懸念を抱かせるものが少なくない。放送メディアは、(1)第三者機関「放送と青少年に関する委員会」を昨年4月に設立し、また、(2)各事業者が「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」を少なくとも週3時間放送し、さらに、夕方5時から夜9時まで児童・青少年の視聴に配慮した時間帯を設定するなどの自主的努力を重ねているが、このような努力をなお一層尽くすとともに新聞、雑誌等においても自主的努力が強く求められるところである。


一方行政によるメディア介入については、憲法が保障する表現の自由の観点から、慎重な検討を要する。現在伝えられる法案は、この点についての配慮が不足し、行政機関によるメディアへの直接介入の危機、場合によっては検閲の危険さえ感じさせるものである。安易な法律による規制は行政による報道規制への道を開きかねない。よって、このような法案は上程されるべきではない。


2001年(平成13年)2月21日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡