改正住民基本台帳法の施行に際し、十分な個人情報保護措置を求める日弁連会長声明

去る9月11日、東京都杉並区長は、「杉並区住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例案」を議会に提出した。


1999年8月、住民基本台帳法が改正され、住民基本台帳ネットワークシステムが導入された。日弁連は、これに対し、プライバシーを侵害する恐れが大きく、国民総背番号制への道をひらくものであるとして反対を表明してきたが、同改正法は、「法律の施行にあたって政府は個人情報保護に万全を期すため、速やかに所要の措置を講ずる」との付則を付した上で、成立に至った。


しかし、この「所要の措置」として策定された、「個人情報の保護に関する法律案」は、民間事業者に一律に罰則を含む規制をするもので表現の自由等を過度に制約するものであり、一方、国の行政機関の個人情報保護のあり方について、総務省の研究会が本年7月に公表した「中間整理」は極めて規制の緩いものであり、どちらも適切な保護措置とは言い難い。


このような状況の中で、杉並区の上記条例は、住民基本台帳ネットワークシステムに参加せざるを得ない地方公共団体の立場で、住民票記載事項の不適正利用等により区民の基本的人権が侵害されるおそれのあるときには必要な措置をとるなど、主体的な姿勢を示すものとなっており、注目すべきものである。


日弁連は、国に対し、「個人情報の保護に関する法律案」等を抜本的に見直し、十分な個人情報保護立法がされるまでは、改正住民基本台帳法の施行を延期すべきことを求める。もし、個人情報保護立法が不十分な形で成立するのであれば、多くの弊害が予想される住民基本台帳ネットワークシステムそのものを施行前に廃止することも求めざるを得ないと考える。


また、各地方公共団体に対し、杉並区の取組みを参考に、住民基本台帳ネットワークシステムに対して、住民の基本的人権を擁護する立場から、地方自治の本旨にのっとり、主体的な姿勢を貫くよう求めるものである。


2001年(平成13年)9月20日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡