刑事公判中の偽証容疑による証人逮捕に関する会長声明

新聞報道等によれば、1月17日、秋田地方検察庁は、選挙違反事件の検察側証人が公判前に供述していた内容とは異なる証言をしたとして、同事件の被告人が無罪を主張して公判中であるにもかかわらず、偽証などの疑いで逮捕し、秋田地方裁判所もその勾留を認めたとのことである。


日弁連は、1968年の人権擁護大会において、「最近数件の刑事事件公判中、偽証嫌疑による証人の逮捕が行なわれ世人の注目するところとなった。これらは、いずれも無罪を主張する事件であり、証言の内容が有罪、無罪を決定する上で、きわめて重要な影響を与える案件である。よって、かかる事件の公判手続中には、検察官は公訴事実の立証につき証人逮捕という権力的な方法をとらず、他の合理的方法によるべきである。」旨決議し、その理由中で、「公判手続中の立会検察官としては、あくまでもその尋問権を活用して証人の虚偽性を撃破し、証言の信用性を喪失させるかたわら、偽証の予防に努めるべきである。」旨述べている。


同決議は、法務大臣及び検事総長に対する要望として執行され、以降、1973年に、偽証容疑で取調べるとして検察庁への同行を求め、これに応じなかった証人に出頭しないと逮捕することがある旨告げて証人を畏怖せしめた事例につき、真実の発見を阻害し被告人の人権を侵害するとして、再び要望をなした事例はあるものの、逮捕にまで至った事例はなく、要望は受け容れられ、同様の事態は根絶されて今日に至っていたものと認識している。


しかるに、前記決議から30数年を経て、同決議に違背する事態が再来したことは極めて遺憾であり、看過することはできない。


当連合会は、法廷における真実の証言を確保し、被告人の公正な裁判を受ける権利を保障する見地から、前記決議の趣旨が徹底され、同様の事態を今後招くことのないよう求めるものである。


2001年(平成13年)1月19日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡