会長コメント - 自由民主党司法制度調査会報告書の公表を受けて

本日、自由民主党司法制度調査会の「21世紀の司法の確かな一歩-国民と世界から信頼される司法を目指して-」と題する報告書が公表された。


この報告書は、司法改革の方向性について多岐にわたる見解を表明しており、当連合会は今後十分に検討したいと考えるが、ここでは、今次の司法改革の最重要の柱であり、当連合会が是非とも実現すべきであると位置づけている法曹一元制度と陪審制度について、コメントを述べる。


同報告書は、「裁判官の育成・任用制度についても検討を加え、多様な経験を積み、広い視野と高い識見を備えた者を裁判官に登用していく工夫が必要であり、あらゆる法律家が相互の協力の下に全体で裁判所を中核とする司法制度を支えていくことにより、国民から信頼され、支持される司法を実現していくことが肝要である」という法曹一元に関する基本的認識を示し、「新たな時代に向けて、国民の期待に一層よくこたえるべく、多様な経験、広い視野と高い識見を備えた裁判官を育成・登用していく視点に立って、その条件整備に向けた具体的・建設的な努力を積み重ねていくことが重要である」として、法曹一元制度実現に向けて積極的な歩みを開始すべきことを求めている。


当連合会は、同報告書の上記認識と抜本的改革への基本姿勢からすれば、法曹一元制度の実現に向けて更に具体的な提言がなされるべきであったと考えるが、今後21世紀に向けて司法の抜本的改革を使命とする司法制度改革審議会において、法曹一元制度を実現する具体的な方策及びプロセスが明確に示されることを強く望むものである。


また、同報告書は、陪審制度について「最も徹底した」国民の司法参加制度であるとの認識を示す一方、陪審制度への国民の信頼や、陪審員の重責を果たすことができるかなど、直ちに導入することは少なからぬ問題があるとの慎重意見を述べつつ、司法制度改革審議会の論議に委ねた。しかし、当連合会は、現在陪審制を実施している諸外国と比較して、わが国の国民が陪審制度への信頼や陪審員の責務を担う能力・公益的意識に欠けるものではないと考える。司法制度改革審議会が、国民の司法参加の実現のため、陪審制度の導入をはかるよう求めるものである。


当連合会は、21世紀にふさわしい抜本的な司法改革の実現を目指し、司法制度全般にわたる改革を提言し、弁護士制度をはじめとする改革に努力しているところであり、今後とも、国民各層から司法改革についての意見が活発に表明され、改革実現に向けた大きな力となっていくことを期待する。当連合会は、法曹一元制度、陪審制度の実現をはじめとした「市民の司法」の実現に向けて一層の取り組みを行っていく所存である。


2000年(平成12年)5月18日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡