「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(案)」に関する談話

「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(案)」(「クローン法案」)が4月14日に閣議決定され、今国会に提出されている。


クローン法案は、特定の人間と同一の遺伝子構造を有する人間を作り出す技術、及び、人間の生命と発生の操作、受精と胚(胎児の始まりの状態だが、胎児のように胎盤の形成が開始されていない)研究の規制に関するものである。


同法案は、「人クローン胚」等を「人…の胎内に移植」することは法律で禁止したものの、クローン胚に類似する「ヒト胚分割胚」「ヒト胚核移植胚」の母胎への移植は法律に基づく指針で規制するとしていて、その扱いがどうなるか不明である。また、母胎に戻さない研究も、人間と人間、人間と動物の間での核移植、ハイブリッド胚(異種間の配偶子を受精させて生ずる胚)、キメラ胚(由来の異なる2個以上の胚由来の細胞の結合により出来た胚)づくりのあらゆる組み合わせを想定し、指針で個別審査により容認する余地をつくっている。法律で禁止される対象行為の周囲で、極めて広範な生命操作の道を開きかねない。


人間のクローン胚等の規制は、諸外国の規制と同様、生殖医療技術および人間の受精研究規制の一環として関連する分野を統合する包括的で整合性のあるものでなければ、人間の固有の尊厳は保持できず、女性の権利ならびに人の生命及び身体の安全を確保すること等をも危ういものにする。


クローン法案については、関連分野の法規制、なかんずく生殖医療技術および人間の受精研究規制等と整合させ、社会との調和の取れた21世紀の生命科学の発展に資するものにするよう、かつ徹底した情報公開の下に社会の十分な理解と合意が得られるよう、多角的な検討を尽くす必要がある。


当連合会は、以上の理由によりクローン法案の今国会での取扱いには慎重であるよう切望するものである。


2000年(平成12年)4月28日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡