接見交通権国賠訴訟に関する会長談話

最高裁第三小法廷は、本年2月22日、接見妨害にかかる安藤・斎藤国賠事件及び上田国賠事件について、同第一小法廷は、同2月24日、内田国賠事件について、同第二小法廷は、同3月17日、伊神国賠事件について、いずれもそれぞれ安藤・斎藤、上田、内田及び伊神弁護士らの上告を棄却した。


既にこれらの事件の刑事訴訟法第39条第3項が憲法違反であるとする上告理由については、昨年3月24日、大法廷判決で合憲との判断が示され、その不当性については、同日会長声明で指摘したとおりである。


上記大法廷判決は、接見交通権は憲法第34条に由来する権利であり、例外的に接見を制限する場合は現に被疑者を取調べ中の場合、また、間近いときに取調べ等をする確実な予定があって、接見を認めたのでは取調べ等が予定どおり開始できなくなる恐れがある場合などに限るとの判断を示していた。しかしながら、安藤・斎藤国賠事件は、相当の時間的余裕を持って接見を求めたのであり「間近いとき」の取調べ予定がある場合にあたらず、内田国賠事件は、取調べのない昼食時間帯の接見を求めたのにこれを拒否し、伊神国賠事件は、一旦接見を認めておきながらそれを中断して接見を禁止したものであって、いずれも接見拒否し得る何らの上記例外的事情も存していない。さらに、このような判断は1988年以降改善されてきている接見運用の実務にも反するものであり、今後、他の事件において、接見拒否の理由として「取調べ予定」が濫用される危険がある。


なお、上田国賠事件を除いてはいずれの判決にも少数意見が付されており、とりわけ、伊神国賠事件の少数意見が、代用監獄に対する国際的批判を踏まえ、代用監獄の留置管理官は、被疑者の権利を擁護する義務及び弁護人との接見交通権を確保する義務を負担するものであるとし、捜査機関の指示が明らかに違法なときは、速やかに接見させるなど適切な措置を講じなければならないと指摘していることは、評価することができる。


当連合会は、これまで憲法上のあるべき接見交通権を実現すべく全力を挙げてきた。弁護人と被疑者との間に自由な接見交通権を認めることは、国際的流れであり、それを制約することは、国際人権規約その他の国際人権法にも違反するものである。当連合会は、今次判決の不当部分を克服し、接見交通権の確立のために、国際的な面を含むあらゆる活動をねばり強く推進していく決意である。


2000年(平成12年)3月17日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹