日産サニー事件特別抗告棄却に関する会長談話

3月9日、最高裁判所第三小法廷は、請求人嘉照氏にかかる再審請求事件(いわゆる日産サニー事件)について、特別抗告を棄却する決定を下したが、甚だ遺憾である。


本件確定判決の証拠構造は、他の冤罪事件と共通した脆弱なもので、氏と犯行を結びつける直接的物証は皆無であり、氏の矛盾、変転に満ちた「自白」があるのみである。平成4年3月23日の福島地方裁判所いわき支部の再審開始決定は、氏の「自白」の信用性の再吟味に正面から取り組み、この間の誤判救済の反省から教訓化されてきている自白評価の方法を踏まえ、その内容が不自然、不合理であることを確認し、これが信用し得ないことや、旧証拠を再評価し、これに新証拠を加えた総合的評価をなしたうえ、船尾鑑定を新規、明白な証拠と認めて、再審開始を決定した。


これに対し、仙台高等裁判所の再審開始取消決定は、白鳥・財田川両事件の最高裁決定で確立した総合評価による明白性判断の原則に違背し、新証拠のみを切り離して明白性の判断をするという重大な誤りを犯したものであった。そして今回なされた最高裁判所の決定は、これらについて何ら納得しうる理由を示すことなく、不当な原決定を追認しており、これは、真実の究明、人権の救済、正義の実現という使命にもとるといわざるを得ない。


当連合会は、今後とも請求人の再審開始を目指すとともに、再審法改正の早期実現のために、引き続き全力を尽くしていく所存である。


1999年(平成11年)3月11日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹