「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案」に関する会長声明

自民・自由・公明三党による議員立法として1999(平成11)年7月30日衆議院に提出された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案」は、先に衆議院法務委員会に付託されて前国会終了と同時に廃案となった「借地借家法の一部を改正する法律案」とほぼ同一のものを含んでおり、むしろその主目的は、居住用、営業用、床面積を問わず一般的な定期借家制度を導入しようとするものであると考えられる。


しかしながら、当連合会は、現時点においても、同法案の骨子となっている一般的な定期借家制度を導入することには反対である。


当連合会は1998(平成10)年5月「借地借家法の一部を改正する法律案」が提出された際にも、借家人と家主の立場の相違や社会的弱者に対する配慮の欠如、公営住宅の整備充実に具体性がないこと等を挙げて定期借家制度の導入に反対したが、そこで指摘した状況は現在も変わりがない上、この制度のもたらす社会的影響について実態に照らした十分な検証がなされているかについて懸念を抱かざるを得ない。


今回の法案は、「良質な賃貸住宅等の供給」との名目の下、法務委員会ではなく建設委員会に付託されているが、定期借家制度の導入をはかる借地借家法の一部改正が、あたかも良質な賃貸住宅の供給につながるような印象を与えるものであり、このような名称と手法による法案の提出方法には重大な疑義が存する。


一般的な定期借家制度の導入は、借地借家法の体系を根本から変えるものであり、従来基本法について調査審議してきた法制審議会での審議は尽くされていない。このような重大な法制度の変更は、建設委員会のみの審議では不十分である。


当連合会は、重ねて定期借家制度の導入を主目的とする「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案」に反対の意を表明する。


1999年(平成11年)11月19日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹