甲山事件第二次控訴審検察官控訴棄却に関する会長声明

9月29日、大阪高等裁判所は、いわゆる「甲山事件」の殺人被告事件の第二次控訴審判決において、検察官の控訴を棄却して、差戻後一審の無罪判決を支持した。差戻前一審及び差戻後一審の2つの無罪判決に続いて3度目の無罪判断がなされたのである。


この事件は、一旦不起訴処分とされたにもかかわらず、再逮捕、起訴されたうえ、二度にわたって検察官が控訴するという異例の経過をたどった。そのため事件発生以来すでに四半世紀を超え、起訴後も今回の判決までに21年もの気の遠くなるような時間を経過した。このことは憲法37条の迅速な裁判を受ける被告人の権利を侵害したと断じうるものであって、しかも、本件における裁判の遅延は検察官の手によってもたらされたものと言えるのである。


当連合会会長は、1998年3月27日、差戻後第一審の無罪判決に対し、国民の司法に対する信頼に応えて、被告人を一日も早く刑事手続から解放すべきである旨の声明を発表した。それにもかかわらず、検察官は二度目の控訴を敢行したのであるが、検察官としては今回の判決を謙虚に受けとめて、これをもって終止符を打ち、もはや上告すべきではない。


折りしも、内閣に「司法制度改革審議会」が設置されて、司法の全分野にわたる改革が検討されようとしているが、当連合会としては、今後とも迅速な裁判を実現する方策を含め刑事司法改革にも努力していく所存である。


1999年(平成11年)10月1日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹