名張毒ぶどう酒第6次再審請求事件の異議申立棄却に関する会長声明

昨日、名古屋高等裁判所刑事第2部は名張毒ぶどう酒第6次再審請求事件の異議申立を棄却する決定を下した。


本件は昭和36年3月に、ぶどう酒に農薬を混入して十数名を殺傷したという事件であり、酒瓶の王冠に残された傷痕が唯一の物的証拠とされており、請求人奥西勝氏は第1審で無罪となりながら第2審で逆転死刑となった希有の事件である。奥西氏は事件発生以来、一貫して無実を叫び続けており、日弁連がその支援を開始して、すでに20余年を経ている。


本件請求審では、名古屋高等裁判所刑事第1部は、弁護団が酒瓶、王冠等に新たに科学的検討を加えるため証拠物の閲覧を申請していた最中の平成10年10月、これを無視して請求を棄却した。異議審において弁護団は請求審に引き続き証拠物の閲覧を申請し、数回にわたり閲覧を実施し、裁判所に対して鑑定の目的、内容、手順を逐次申告しており、今回の異議棄却決定は、すでに鑑定人が準備を整え、鑑定のための予備実験に着手した矢先のことであった。裁判所は弁護団の鑑定作業の進行を知りながら、敢えてその途を封じたのである。


異議審は未だ申立後1年を経過しておらず、死刑廃止が世界的潮流となっている今日、裁判所が死刑囚の無実の叫びを急いで封じる必要がどこにあるのだろうか。しかも本決定は請求審決定が適法であることを擁護するに終始しており、新旧証拠の総合的判断は全くしていない。今回の決定は無辜の救済を目的とする再審制度の本旨に反するといわざるを得ない。


当連合会は今後、本件に対する支援を一層強化することを決意するとともに、本件の再審開始へ向けて各界各層の協力を期待するものである。


1999年(平成11年)9月14日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹