「国旗及び国歌に関する法律案」国会提出に関する会長声明

政府は、去る6月11日、「国旗及び国歌に関する法律案」を急遽国会に提出した。


「日の丸」「君が代」は、国民の間にある程度浸透していることは事実である。しかし、過去のいまわしい戦争を想起させ、また被害を受けた諸国民に対する配慮の面からも、国際協調を基本とする現行憲法にふさわしくないと指摘する声も少なくない。


政府は、今回の上程にあたり、「君が代」の「君」は「日本国憲法に規定された国民統合の象徴としての天皇」であるとの新たな見解を示した。このような解釈をとるとしても、なお「君が代」の歌詞は国民主権という憲法の基本原則にふさわしくないとする意見があることも事実である。


また政府は、法案は「日の丸」の掲揚、「君が代」の斉唱を強制するものではないと説明している。しかし国旗・国歌が尊重されるのは、国民的心情によるものであるべきで、法制化によって強制の傾向が強まることは問題である。


国旗・国歌はその性質からして大多数の国民に喜んで迎えられるものでなければならない。今回の法案上程は、国民の間における混乱を持ちこみかねないものであり、あまりに性急といわねばならない。


当連合会は、国旗・国歌が現行憲法にふさわしいものとして国民的合意が得られるよう、その法制化の要否も含めて、十分時間をかけて議論がなされるべきであると考え、国会において格別慎重に審議されることを求めるものである。


1999年(平成11年)7月14日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹