組織的犯罪三法案衆議院可決に関する会長声明

本日、衆議院本会議において、通信傍受法を含むいわゆる組織的犯罪対策三法案が一部修正のうえ可決された。


当連合会は、平成9年5月の定期総会決議及び平成10年2月の意見書において、本法案の前身である法律案要綱骨子に対して、多岐にわたる問題点を指摘し、さらに、これまで機会あるごとに慎重な上にも慎重な審議を尽くされるよう求めてきた。しかし、法案に懸念を示す多くの世論があるにもかかわらず、十分な審議が行われることなく採決されたことは極めて遺憾である。


自民・自由・公明の三党によって提案・可決された修正案は、通信傍受の対象犯罪を薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定しているものの、当連合会が意見書で指摘している他の問題点については実質的な議論がなされていない。


例えば、傍受対象が組織的犯罪だけに限定されていないこと、将来の犯罪をも対象としていること、令状に記載されていない別件事件の傍受をも認めていること、犯罪と関係する会話かどうかを識別する該当性判断の傍受につき、傍受がなされたことに対して通知がなされず、傍受をされたという事実自体が知らされないこと等の問題点が全く解消されていない。さらに重大な点は、立会人が犯罪の被疑事実を知らされず、通話内容を聴くこともできないため、捜査機関の違法を防止する実質的な機能を有していないことである。したがって、本法案では、犯罪とは無関係な多くの通信が捜査機関の監視下に晒されることによる人権侵害の危険は拭い切れないものである。


また、構成要件が曖昧な組織的犯罪に対する重罰化や、広範囲な犯罪類型を対象とし、法人等の事業経営支配を目的とする行為にまで処罰範囲を拡大したマネー・ローンダリング規制については、何らの解決も図られていない。


当連合会としては、参議院において、通信の秘密の不可侵、プライバシーの保護及び適正手続の保障などの憲法上、刑事法制上の問題点や立法の当否に踏み込んだ議論がなされるよう、重ねて強く求めるものである。


1999年(平成11年)6月1日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹