死刑執行に対する会長声明

6月25日に東京及び福岡で死刑確定者3名の死刑執行がなされた旨報じられた。これにより1993年3月以来5年余の間に28名の死刑執行がなされたこととなる。当連合会は、これまで死刑制度の存廃について国民的議論が尽くされるまで死刑執行を差し控えるべきことを求めてきた。


死刑については、国連総会において死刑廃止条約(1989年12月15日)が採択され、また、死刑確定者の処遇問題については、国連経済社会理事会による「死刑に直面している者の権利の保護の保障の履行に関する決議」(1989年5月24日)が日本を含む国連総会出席加盟国全会一致で承認され、さらに死刑廃止条約の批准と死刑確定者などの被拘禁者の処遇改善について国際人権〈自由権〉規約委員会による日本政府への勧告(1993年11月4日)がなされている。さらに最近においても1997年及び1998年4月3日の国連人権委員会において、「死刑廃止に関する決議」がなされ、死刑存置国に対し、「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけがなされた。当連合会においても、以上の情勢を踏まえて、昨年11月19日に内閣総理大臣及び法務大臣に対して、国際人権〈自由権〉規約を遵守し、死刑に直面する者に対する権利保障のための対策をすみやかに講じるよう要望した。


こうした状況にもかかわらず、再び死刑が執行されたことは、誠に遺憾であり、当連合会は、重ねて、死刑の執行は差し控えるべきことを強く要望する。


1998年(平成10年)6月26日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹