民法改正に関する会長声明

  1. 自民党法務部会家族法小委員会は、3月4日の委員会において、民法(家族法)改正の方向について、婚外子(非嫡出子)相続分差別の撤廃は見送り、夫婦別姓に関しては現行の夫婦同姓強制制度を維持したまま「旧姓続称制度」の創設を認めるとの方針を決定したと報道されている。
  2. 上記決定は、当連合会が両性の平等及び個人の尊厳の尊重並びに子どもの人権保障の観点から、再三にわたり求めてきた、婚外子相続分差別の撤廃並びに選択的夫婦別姓制度の導入の要求のいずれにも応えないものである。
  3. 現行の民法は、婚外子の相続分を婚内子(嫡出子)の2分の1と定めているが、父母が婚姻をしているか否かは子どもに責任のないことであって、この相続分差別は憲法、諸条約に違反する不合理な差別である。この相続分差別については、すでに1993年、国際人権(自由権)規約委員会が、同規約26条(法の前の平等)と矛盾するものとして、日本政府に対し法改正を勧告しているものであり、また、日本が1994年に批准した子どもの権利条約2条が禁止する「出生による差別」にも該当するものである。この差別をいつまでも放置することは許されないのであって、速やかに民法を改正し、差別を撤廃すべきである。
  4. また、旧姓続称のあり方は、いまだ自民党前記小委員会内でも検討中の模様であり、なお内容は流動的であるが、仮に戸籍に旧姓を通称として記載し、公的には旧姓しか使用できないとするのであれば、社会的には選択的夫婦別姓制度と変わらず、なぜ戸籍上の同姓強制に固執するのか疑問である。また、旧姓使用の範囲を一定範囲に限定するのであれば、個人が社会生活上、2つの姓を持つこととなり、社会的混乱も予想される。
  5. よって、当連合会は、自民党に対し、前記決定を見直し、婚外子相続分差別の撤廃と選択的夫婦別姓制度の導入を方針とするよう、強く求める。

1997年(平成9年)3月7日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫