調布駅南口事件最高裁判決に関する会長声明

昨日、最高裁判所第1小法廷は、調布駅南口事件の被告人の1人について被告人の上告を認め、控訴審判決を破棄し公訴提起を違法無効として、公訴棄却した1審判決を維持する旨の判決を宣告した。


本事件は、1993年に起きた傷害等の少年保護事件に関し、家庭裁判所の保護処分決定は事実誤認による違法な処分であるとして5人の少年が抗告し、高等裁判所がこれを認めて同保護処分決定を取り消したにもかかわらず、差戻後の家庭裁判所が刑事処分相当とし、これを受けた検察官により起訴されたものである。東京地方裁判所八王子支部は、5人のうち本件1人の被告人について、不利益変更禁止原則違反に基づく違法な起訴であるとして公訴棄却の判決をしたが、控訴審は、検察官送致・起訴だけでは不利益変更か否か不明であるとして、破棄差戻す判決をしたため、上告されていたものである。


当連合会は、本判決が少年保護手続に不利益変更禁止原則の適用があることを前提として、保護処分に比し刑事処分は一般的類型的に不利益であることを認め、保護処分優先主義に沿った判断を示したものとして、その意義を高く評価し、これを歓迎するものである。また、刑事手続の中で時間を要して事実審理をすることにより、少年に過重な負担をかけることを避け、公訴棄却を維持する形式判決により被告人を手続から解放したことは、少年の地位を早期に確定すべきであるとする少年法の精神に沿うものとして、評価するものである。


現在も、本事件の残る4人の被告人について、東京地裁八王子支部でなお実体審理が続けられている。本判決の趣旨に従って、この4被告人についても、本件同様に手続から速やかに解放されるよう、関係機関の適切な配慮を要望するものである。


1997年(平成9年)9月19日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫