破防法適用棄却決定に対する声明

本日、公安審査委員会は、オウム真理教を対象とする破壊活動防止法(以下、「破防法」という。)に基づく解散指定処分の請求を棄却する旨の決定をした。 当連合会は、かねてより破防法が違憲の疑いの極めて強い法律であり、とりわけ同法の定める団体規制は、憲法の保障する基本的人権を侵害するものであること明白である旨を指摘し、その適用に反対してきた。昨年5月の定期総会においても、公安調査庁長官に対し、解散指定処分を請求しないよう求める決議を満場一致で採択し、同年9月には、公安審査委員会に対しても同請求を却下するよう求めるとともに、仮に審査手続に入るにしても公正かつ適正な手続により、同教団に対する解散指定処分をしないよう申し入れた。


今回の決定は、同教団の将来的な破壊活動を行う明らかなおそれに対する実体的判断に基づき、その適用を否定したものであり、その結論は当然とはいえ、憲法の下での人権保障と民主主義を護りぬいたものとして、これを心から歓迎する。かかる決定をなすに至った公安審査委員各位の高い見識とご努力に対しては、深く敬意を表するものである。


ところで、当連合会は、破防法に基づく団体規制の適用には、憲法上の観点から今後とも反対するものであり、従って今回の決定が実体審理に基づく棄却の決定であることは不十分なものであり、法適用を否定し、請求自体を却下すべきであったと考える。加えて、今回の破防法適用に関する一連の手続の過程、とりわけ公安調査庁による同法の弁明手続のあり方、公安審査委員会の審査における非公開手続、証拠採用手続等々には、公正かつ適正なものであるかにつき、重大な疑義が存する。今回の手続が、適正手続のあり方に重大な禍根を残すことを危惧するものであり、今後とも破防法についての調査・研究活動を続ける所存である。 当連合会は、本日の決定によって、とりあえず本件について破防法の適用が回避されたことを、心から歓迎するとともに、オウム真理教の信徒によるとされる一連の犯罪行為については、厳正な手続による刑事裁判を通じて、真相の解明と責任を明らかにさせ、かつ破産手続等により教団の民事責任が追及されるべきと考える。今後関連して生起する問題についても、継続して注目していくことを明らかにする。


1997年(平成9年)1月31日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫