「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律」の可決・成立をうけて

本日、国会は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律」を成立させた。この法律は若干の男女雇用機会均等法の手直しと引き換えに、労働基準法(労基法)上の女性に対する時間外・休日・深夜労働についての規制を撤廃するものであり、きわめて問題である。


すなわち、わが国では、男性については労基法36条による協定を結べば何時間でも残業を命ずることができ、長時間・深夜労働の現状は、過労死に象徴されるように働く者の生命と健康をおびやかしている。さらに、わが国では、いまだ強い性別役割分担意識があって、女性の家事労働の負担がきわめて大きい実態がある。


このような状況の下で、女性に対する労基法上の時間外・休日・深夜労働についての規制を撤廃することは、女性の健康のみならず家庭生活にとっても、きわめて大きな障害をもたらすこととなる。そして、多くの女性は正規労働者として就業を継続することを断念せざるを得ないこととなるおそれがある。


わが国も1995年に批准したILO156号条約(家族的責任をもつ男女労働者の平等待遇に関する条約)は、国に対して男女労働者が家庭責任を果たしながら働き続けることができる措置を求め、同勧告165号では、具体的に1日の労働時間の短縮及び時間外労働の短縮が必要であることを規定している。1995年ILO調査でも96か国が1日の労働時間の規制をしており、国際的には労働時間についての男女共通の規制を有する国が大半を占める。


当連合会は、本年3月、本法案に対する意見書を発表し、男女共通の規制を求め、右規制ができるまで女子保護規定を撤廃することに反対してきた。


にもかかわらず、男女共通の規制もないまま、女子保護規定を撤廃する法律が成立したことに、強い遺憾の意を表明する。同時に、この法律の施行される1999年4月1日までに時間外・休日・深夜労働について、職業生活と家庭生活を調和させ、人間らしい生活を営みうるよう男女共通の規制を立法化することを強く求めるものである。


1997年(平成9年)6月11日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫