行政改革委員会「情報公開法制の確立に関する意見」に対する声明

本日、行政改革委員会による「情報公開法制の確立に関する意見」が発表された。


当連合会は、同委員会の「情報公開法制の確立に関する意見」策定に至るご努力に対し敬意を表するとともに、政府に対し、情報公開法制定を早期に実現するよう強く求めるものである。しかしながら、同委員会の「情報公開法制の確立に関する意見」に示された「情報公開法要綱案」(以下「要綱案」という)は、当連合会が、かねて、各界・各層の広範な市民との意見交流の上、同委員会行政情報公開部会に対して述べてきた以下の論点について、なお大きな隔たりのあることは、まことに遺憾である。


その第一は、要綱案の目的規定に情報公開請求権を国民の「知る権利」として明記していない点である。国民の情報公開請求権が、「知る権利」に基づく憲法上の権利であることを情報公開法に明記することは、要綱案の目的とする「説明する責務」に憲法上の根拠をより明確にし、行政機関による情報公開をより徹底させる上で、重要な意義を持つものである。


第二に、本来、公開を大原則とし、適用除外事由をごく一部に限定するのが、情報公開のあるべき姿であるところ、要綱案は「不開示情報」という文言を使用していることに端的に示されているように、不開示の範囲を、極めて広く定めている点である。特に、防衛、外交、警察の情報に関しては、「おそれがあると認める相当の理由」がある情報として、行政機関の第一次判断権を尊重し、これについての司法審査は、狭い範囲に止めていることは問題である。また、個人情報については、プライバシー保護の範囲を越えて個人識別説を採用していること、法人等に関する情報について、一定の要件が付されているものの任意に提供され、非公開特約のあるものを不開示としていることなど、不開示事由が、広範であって、現実に則したものではなく、行政の秘密主義を助長する虞がある。


第三に、司法救済制度について、事実上、東京以外の地方裁判所に管轄を認めていない点である。情報公開制度を実効性あるものにするためにも、原告の住所地に不開示決定処分の取消訴訟の裁判管轄を認めるべきである。


当連合会は、1980年11月8日、第23回人権擁護大会において「情報公開法等の制定に関する決議」をなして以来、情報公開制度について検討を重ね、1994年7月には「情報公開法大綱」を発表し、真の情報公開法の早期制定を求める活動を続けてきた。その基本とすることは、主権者たる国民には、行政情報について公開を求める権利があり、その例外については、最小限で明確に規定されるべきとするものである。


当連合会は、要綱案が、政府において「国民に説明する責務」があることを明確にし、そのための情報の公開の必要性を掲げている点は評価するものであるが、先に指摘した点について、さらなる改善を求め、真に国民のための情報公開法の早期制定に向けて、国民とともに、全力を尽くす覚悟である。


1996年(平成8年)12月13日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫