行政改革委員会行政情報公開部会「情報公開法要綱案(中間報告)」に対する日弁連会長声明

本日、行政改革委員会行政情報公開部会による「情報公開法要綱案(中間報告)」が発表された。


日本弁護士連合会は、1994年7月、「情報公開法大綱」を発表し、行政改革委員会行政情報公開部会の審議に対しても意見書を提出するなど、情報公開法の早期制定を求めてきたところであり、同部会の報告を大きな期待をもってみまもってきた。


当連合会としては、これまで一年余にわたる行政情報公開部会のご努力に対し、敬意を表したい。


しかしながら、中間報告は、「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する国民の権利につき定める」とするものの、国民による行政の監視・参加の充実に目的を限定し、広く国民の「知る権利」を明記したものとなっておらず、この点は誠に残念である。


しかも、この要綱案では、


  1. 個人が識別される情報や事業者等から秘密約束のもとに提供を受けた情報を非公開とするなど、個人情報や法人情報に広範な非公開事由を設けていること、
  2. 行政関連の情報についてはとりわけ、率直な意見の交換とか国民に誤解を与える等の抽象的で包括的な非公開事由を設け、かつ行政事務・事業を殆ど網羅する内容について「当該事務若しくは事業又は将来の同種の事務若しくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非開示としていること、さらに、
  3. 情報の存在・不存在を明らかにしないことを肯定するなど、公開の原則が貫かれているとは到底評価することはできない。

さらに言うならば、対象文書を決裁、供覧等を終了した文書に限らないとしているが、「組織としての共用文書となっている」こととも説明されており、これではHIV事件における一連の厚生省文書も個人メモとして公開対象文書に含まれないおそれがある。また、手数料をもって大量請求を抑制したり、大量請求に対して決定しないことを認めるものとなっており、不服申立てについての地方の住民への配慮が盛り込まれていないなど、不十分な点が多い。


現在国会で審議されている民事訴訟法案における行政文書についての文書提出命令について、1996年3月27日付当連合会「民事訴訟法改正に関する緊急意見書」でその問題点を指摘したところであるが、今回の情報公開法要綱案の問題と基本的に共通するものである。行政情報は国民の共有財産との認識のもとに、最終報告においては、真の情報公開制度の確立に向けて国民の期待に応えた情報公開法要綱が策定されることを求めるものである。


1996年(平成8年)4月24日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫