家族法に関する総理府世論調査結果をうけての法務大臣談話に対する会長談話

内閣総理大臣官房広報室は11月16日、選択的夫婦別姓制度導入等の「家族法に関する世論調査」の結果を発表した。


この調査結果によれば、選択的夫婦別姓制度について、「現在の法律を改める必要はない」と答えた者の割合が39.8%、「法律を改めてもかまわない」と答えた者が32.5%、 「通称として使えるように法律を改めてもかまわない」と答えた者が22.5%であった。


「別姓使用を可能とするために法改正をしてもよい」とする者が合計55%にのぼり、94年の世論調査に比べて、2倍以上となった。また、嫡出でない子の法律上の取扱いについては、「不利益な取扱いをしてはならない」とする者が54.5%で、「不利益な取扱いもやむを得ない」とする者21.9%の2倍以上であった。


当連合会は従来、選択的夫婦別姓制度の導入及び婚外子差別の撤廃について、速やかに民法改正案を国会に上程し、広く国民の間の議論とすべきことを訴えてきたが、上記世論調査結果から明らかなように、既に世論もこれらの民法の改正を指向しているのであるから、重ねて次期通常国会への民法改正案の上程を求めるものである。


ところが、松浦功法務大臣は、上記世論調査の結果をうけて、選択的夫婦別姓制度の導入について「世論調査の結果はあまり(法改正を)急がない方がいい、と我々に教えている」旨の談話を発表したと報道されており、さらに、12月5日の衆議院法務委員会での質疑においても、同法相は「慎重に取り扱わなければいけない」旨答弁している。


そもそも、選択的夫婦別姓制度の導入は、本年 2月、法制審議会が答申したものであり、この答申をうけて法務省が民法改正案を作成したものであって、この改正案の提出責任を負っている法務大臣の上記談話及び答弁は、民法改正の機運に水を差すものと危惧せざるを得ない。


世論調査の総体としての評価は、前述のとおり、法改正を容認する者のほうが多いのであって、世代別では、法改正の要なしとするのは60代以上の男性が著しく多いのみで、20代、30代の男女いずれも「法律を改めてもかまわない」が40%を超え、「通称として使えるように法律を改めてもよい」を合わせると70ないし80%が賛成している。40代でも、法改正容認は60%を超えるのである。


当連合会は、法務大臣が世論調査の結果を率直に受け止め、民法改正案の早期上程に前向きに取り組まれることを求める。


1996年(平成8年)12月10日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫