オウム真理教への破壊活動防止法の団体解散処分請求についての会長談話

  1. 公安調査庁長官は、1996年7月11日、公安審査委員会に、破壊活動防止法(以下、「破防法」という)に基づく、オウム真理教に対しての団体解散指定処分の請求をした。
  2. 当連合会は、過日、本年度定期総会において、破防法は、法律そのものが違憲の疑いが強いものであり、とりわけ団体規制たる解散指定は、憲法の保障する思想・信条の自由、集会・結社の自由及び言論の自由等の基本的人権を侵害することが明白であることから、その適用に反対し、公安調査庁長官に対しては、解散指定処分の請求をしないとの決定をするよう強く求めることを決議し、その旨同長官に申し入れた。
    しかるに、今回、同長官が、公安審査委員会に対して上記請求をしたことは、極めて遺憾であり、その決定に強く抗議する。
  3. 破防法の団体解散指定は、1952年の法制定後43年間、一度もその適用がなされていない。それは、この法律の主要条項が基本的人権の侵害を惹起するおそれのあることから違憲の疑いが強く、慎重な扱いがなされてきたものといえる。今般のオウム真理教の行動に対しては、極めて強い社会的非難があり、同教団の行動に対して数々の刑事訴追等がなされるべきことと、破防法の適用とは区別して考えられるべきことは、当連合会の総会決議で指摘するとおりである。
  4. よって、当連合会は、あくまでも破防法に基づく解散指定処分には反対するものであり、今後、公安審査委員会においては、証拠の扱いを含めて、破防法の違憲性と危険性を十分認識された上、厳正なる審査の下、慎重なる判断をなされるよう求めるものである。

1996年(平成8年)7月12日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫