従軍慰安婦問題への政府の対応に関する声明

1.

日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は、1995年2月、「従軍慰安婦」問題について被害者個人に対する国家補償のための立法による解決を提言し、これを政府並びに国連女性の地位委員会及び第4回世界女性会議(以下「北京会議」という)などに提出した。


2.

北京会議は、日弁連を含む多数のNGOの要請に応え、147(f)を含む行動綱領を全会一致で採択した。147(f)は、「従軍慰安婦」を指す戦時における性的奴隷制 (Sexual Slavery) の被害者などに対する補償を含む原則を明言している。


しかるに、日本政府関係者は、性的奴隷制という国連用語が、「従軍慰安婦」を含むことを否定し続け、この行動綱領を無視し、慰安婦被害者個人に対する国家補償を拒否し続けている。


3.

これまでの国連における審議経過をふまえると、性的奴隷制という用語が、「従軍慰安婦」制度を示す用語であることは明らかである。


慰安婦問題が国連で提起された1992年2月以降、日弁連を含むNGOは、一貫して慰安婦問題に関し、「性的奴隷」(Sex Slaves またはSexual Slavery) として日本政府に対し国家による被害者への補償を要求し続けてきた。


その結果、日弁連も参加した世界人権会議(1993年6月、ウィーン)においても、過去を含め、「全て」の場合、性的奴隷制問題について、特に効果的な対応をすべきことが決められたのである。このとき、性的奴隷制という用語は、初めて国連用語となったが、NGO及び諸国政府の間では、この用語が日本軍慰安婦制度を指すことは、共通の理解になっていた。北京会議行動綱領147(f)の原案(戦時性的奴隷制などに関するもの)が、ニューヨークで1995年3月~4月に開催された国連女性の地位委員会(北京会議準備会)に提案された際、提案国は「従軍慰安婦」問題を解決するために必要な原則であることを理由にしていたのである。これが、多くのNGO・政府の支持を得て、全会一致で採択されたという経過がある。


同委員会に提出された女性に対する暴力に関する国連事務総長の報告書(E/CN.6/199 5/3/Add.4, 18 January 1995, para.8 & note 9.)を見れば、国連用語としての性的奴隷制が、「いわゆる『慰安婦』として第二次大戦中に日本陸軍によって組織的に誘拐され、結局売春を強制された」問題をさすことが容易に理解できよう。


4.

日本政府は、上記のように国連の意図を歪曲することをやめ、上記行動綱領及び国連差別防止少数者保護小委員会(通称「国連人権小委員会」)決議(1995年8月、日本に行政的審査会を設置するか、国際仲裁裁判を受諾するかによって国家補償問題を解決するよう勧告したもの)に従い、被害者に対する国家補償をなすことを決意し、日弁連提言及び国連決議等に鑑み、「従軍慰安婦」被害者に対する国家による補償を可能とする立法の提案を早急に検討すべきである。


1995年(平成7年)11月16日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献