女子学生就職差別に関する声明

女子新規学卒者の就職の状況は、今年度はさらに厳しく、民間調査機関の調査によると、求人倍率が4年生大学で0.45倍、短期大学で0.41倍という状況にあり、多くの女子学生が就職できないまま卒業という事態が懸念されている。不況による就職難という一般的な問題のほかに、特に女子学生の就職率が男子学生(大学卒求人倍率1.33)に比べて極めて厳しい状況にある。


労働省が昨年に引き続き設けた「女子新規学卒者の就職問題に関する特別相談窓口」には、女性には応募の機会を与えない、女性の採用を少なくしている、女性のみに「自宅通勤」「年齢制限」といった特別の条件を付加しているなどの相談が多数寄せられている。こうした状況をみるとき、就職にあたって女性が差別されていることは明らかである。このような状況は、経済界に性別役割分業意識が未だに根強く、男性は基幹の労働に、女性は補助的労働に位置づけられて、不況になるとまっ先に雇用調整の対象とされることに起因すると考えられる。


また、女子学生自身が行ったアンケート調査によれば、上記のような例のほか、就職面接試験でセクシュアルハラスメントにあたる質問を受けた例も報告されている。職を求めるという弱い立場にある者に対し、これを利用し、性的に侮辱するようなことは、人間の尊厳を傷つけるものであり、決して許されることではない。


このような女性に対する差別は、憲法第14条に定める男女平等の原則に違反し、また、あらゆる分野における女性差別の禁止及び性別役割分業意識の克服を規定する女子差別撤廃条約にも違反する。男女雇用機会均等法においても、募集・採用につき、女子に対し男子と均等の機会を与えることについての努力義務を規定している。


当連合会は、女子学生に対する就職差別が、生存のための最も基本的な権利である労働権を不当に奪うものであり、女性の社会参加を最初の段階で拒否することによって以後に重大な不利益を及ぼし、社会における女性差別の固定化ないし拡大につながるものと考える。


そこで企業に対しては、早急に募集・採用における女性差別を解消すること、求人紙その他報道機関に対しては、男女雇用機会均等法ならびにその指針に反する募集方法による求人広告の掲載をやめること、労働省に対しては、女性差別の解消のため実効ある行政指導を行うこと、その他あらゆる関係者に対して、女子学生の就職差別解消に向けた努力を要請する。


さらに、男女雇用機会均等法について婦人少年問題審議会で見直し作業が再開されたが、募集・採用に関する規定を、前記のような努力義務ではなく明確な男女差別禁止とし、また一見平等に見えても実質的には差別となる間接差別(例えば転居を条件とするコース別雇用など)をも禁止すること、さらに違反した場合の制裁措置を設けることを求めるものである。


1995年(平成7年)11月1日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献