フランス・中国の核実験に抗議する声明

核兵器の使用・実験は、何世代にもわたり地球環境を汚染、破壊し、人間の生命・健康に深刻な被害をもたらす最大の人権侵害である。


われわれは、核兵器の使用・実験の脅威から解放され、人間の尊厳を保って、世界において平和に生きる権利がある。


いまや、核兵器の使用・実験は、国際法に違反することは明かである。 世界各国は、本年5月に核不拡散条約(NPT)の無期限延長を決定し、近く包括的核実験禁止条約(CTBT)を締結し、核軍縮・核廃絶への道をようやく歩み出そうとしている。


にも拘らず、国際世論を無視して、本年5月中国が2回にわたり、さらに、本年9月フランスが南太平洋のムルロワ環礁において、核実験を行った。


日本は、広島、長崎において、原子爆弾投下による被害を受けた唯一の国であり、第五福竜丸が核実験による放射線の被爆を体験している。この悲劇を、世界のいずれの場所においても繰り返してはならないということは、全国民の一致した願いとなっている。


日本弁護士連合会は、このような日本国民の悲願と核の脅威を訴える国際的世論を背景に、過去数次にわたって核廃絶を求める決議を行ってきた。また、長崎県弁護士会は、本年8月、核実験強行と核実験再開に対し、即時停止を求める声明を発表した。


今回の中国・フランスの核実験再開強行は、NPT体制等の崩壊をもたらすばかりでなく、国際世論を無視した人類への挑戦であり、人類みずからを破滅に導く最悪の選択というべきである。


日本弁護士連合会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現という、その使命からも、この度の中国・フランスの核実験に対し強く抗議し、今後の核実験の即時中止を要請するとともに、中国・フランスをはじめとするすべての核保有国が、核廃絶に向けて真剣な努力をするよう求める。


1995年(平成7年)9月13日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献