製造物責任法の政府案策定に関する談話

本年4月5日発表されたPL法連立与党プロジェクトの製造物責任法案は、同法についての「連立与党プロジェクトの検討結果について」と題する書面によると、法制化にあたって、 欠陥概念について「製品の効用・有用性」、「製品の価格対効果」、「技術的実現可能性」などEC指令にもない6項目の判断要素を排除したこと、 対象製造物の範囲につき血液製剤の一部及び生ワクチンを適用対象外としなかったこと、 賠償対象損害の範囲について、拡大損害をもたらしたときは当該製造物も含めるなど、民法の基本原則を相当にとり入れたこと、 責任期間につき、遅発性・蓄積性被害について損害発生時を同期間の起算点としたことなど、第一四次国民生活審議会最終報告書に比して前進したものと評価ができ、当連合会は、連立与党PLプロジェクトチームのメンバーに対して敬意を表するものである。


しかしながら、欠陥や因果関係の推定規定を設けず、特に欧州連合(EU)各国が採用している製品を流通に置いた時の欠陥の存在の推定規定も設けなかったことや、考慮要素としての「製品の表示」を例示しなかったこと、開発危険の抗弁を認めるとしたこと、証拠開示についての検討がなされていないこと、責任主体の範囲をEC指令より限定したことなど、なお多くの問題点を残している。


またテレビ報道などによると、予定されている製造物責任法要綱の目的規定には、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」との表現があるとのことである。かかる目的規定は、製造物責任法の目的としては全く異質なものであるとともに、同法の性格や立法後の解釈・運用に誤解を招きかねないもので、極めて不適切なものである。


当連合会は、政府においてはこれらにつき更に検討審議のうえ、被害にあった国民が速やかに救済され、真に国際的に調和のとれた製造物責任法を、今国会において審議・制定されることを要望する。


日本弁護士連合会
会長 土屋公献