袴田厳氏の再審請求事件の棄却決定に対する談話

本日、静岡地方裁判所は、袴田巌氏の再審請求事件について、請求を棄却する決定をなした。まことに遺憾である。


当連合会は、袴田氏からの人権救済の申立に応じて人権擁護委員会の中に袴田事件委員会を設置して、脆弱な証拠構造に支えられた1、2審判決の事実認定の矛盾を徹底的に明らかにするとともに、被害者の傷と凶器との不一致、自白にあるような方法では裏木戸の侵入・脱出は不可能であること、この点に関する捜査報告書は、内容が虚偽である疑いが濃いことなどを新証拠により明らかにし、同氏の無実を証明するための努力を重ねてきた。


これによって、28年間訴えてきた袴田氏の無実は、事実的に明らかなものとなったとして、再審請求を支援するとともに、再審開始決定のあるべきことを確信してきた。


しかるに、静岡地方裁判所が、事実の取調すら行うこともなく再審請求を棄却したことは、はなはだ不当である。


当連合会は、1日も早く袴田氏に対し再審開始決定があり、無罪判決の言渡しがなされるよう、今後とも、なお一層の支援を続けていく決意である。


1994年(平成6年)8月9日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献