企業襲撃事件に対する声明

最近企業の幹部及び企業に対する凶悪な襲撃事件が多発している。


平成4年6月以降本日に至るまで、企業の幹部に対する殺傷事件、企業の建物に対するピストル発砲事件等の事件が20件あまり発生した。残念ながらこれらの事件の多くが未検挙であり、その背景、動機等がはっきりしない状態である。かかる状態に対して、株主総会をまじかに控えた企業ばかりか、一般の国民の間にも強い不安感が生じている。


株主への利益供与を禁止した改正商法が施行され10年以上経過し、指定暴力団員の暴力的要求行為を禁止した暴力団対策法が施行され2年が経過した。この間、企業のほか一般国民の中にも暴力追放の気運が著しく盛り上がったところである。この気運を後退させてはならない。


このため、我々は、関係当局に対し、前記事件にかかる犯人の早期検挙とその実態を解明することと同時に、かかる事件が再発しないよう、企業の自主警戒体制の充実をはかるほか、関係当局と関係者との充分な連携をとった適切な警戒警備の実施を強く要望する次第である。


我々は、株主総会の開催時間の長短を善し悪しの基準としている現在の風潮についても強い憂慮の念を抱くところである。いうまでもなく、株主総会は、本来株主にとって開かれたものでなければならないほか、かかる風潮が総会屋のつけこむ余地を与えていたからである。我々は、企業に対し、利益供与のないかつ暴力に屈しない正当な株主総会の運営を要望すると共に、違法、不当な介入がある場合には、関係当局と協力してその根絶に努めるよう要請するものである。


我々は、民事介入暴力の排除及びその被害者救済のための様々な運動を行ってきた。今後も、国民の要望に応えられるよう一層その活動を充実していく決意である。


1994年(平成6年)6月2日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献