伊丹十三監督の新作映画上映中の民事介入暴力に対する声明

去る5月30日、右翼団体員と称する者が、東京・有楽町で、映画監督伊丹十三氏の新作映画上映中に、ナイフでスクリーンを切り裂くという事件が発生した。男は、同監督の作品「ミンボーの女」に絡んで、「日の丸を恐喝の場面の小道具に使うのは許せない」、「天誅を下す」等と書いたビラを撒いたと報道されている。


この事件は、表現・言論の自由を暴力に訴えて踏みにじる重大な人権侵害行為であり、民主主義の基本原則に対する挑戦と言わざるを得ない。民事介入暴力の被害者救済、事前防止に努力してきたわれわれ弁護士会は、この事件をとうてい容認することはできず、関係諸機関の厳正な対応を期待する。


また、先日、この事件の被害者である企業が、器物損壊罪での告訴をしないとの方針を改め、告訴状を提出する決断をしたと伝えられた。このような場合、民事介入暴力排除のためには、被害者としては毅然たる対応をすることが最も効果的であることは、これまでも日弁連主催の民暴大会等において力説されているところである。ことに社会的存在である企業がこのような対応を率先して勇気を持って日常的に実践していく必要が特に大であることを指摘したい。


当連合会は、さらに民事介入暴力対策を強力に進めていく決意であることを表明する。


1993年(平成5年)6月24日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎