国際人権(自由権)規約の実施状況に関する第3回日本政府報告書に関する国際人権規約委員会見解の発表をうけて

国際人権(自由権)規約委員会は、1993年10月27日、28日に審査された、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下、「国際人権(自由権)規約」という)の実施状況に関する第3回日本政府報告書に関して、委員会見解を11月5日発表した。


我が国の法制度並びにその運用が国際人権(自由権)規約に適合しているか否かに関して、同規約によって設立され、各国政府の推薦をうけて選任された専門家によって構成された正規の国際機関による見解が文書により発表されたのは、今回が初めてであり、正に画期的なことである。


今回の日本政府報告書審査に当たっては、上記委員会見解にも述べられているとおり、当連合会をはじめとして多くの非政府団体(NGO)から多大の関心と情報が同意員会に寄せられた上で、審査が行われた。同見解によると、我が国の人権状況全般については、1988年に行われた第2回日本政府報告書の審査以来改善が見られ、人権に対する良き関心が払われており、また日本政府は国際的なレベルで人権の促進について積極的な役割を果たしていると高く評価されている。


しかしながら、同委員会見解によって、国際人権(自由権)規約の規定に合致していないと明確に指摘された事項は、「在日韓国・朝鮮人、部落出身者、アイヌ民族等に対する差別」、「女性に対する差別」、「婚外子の差別」、「死刑制度と死刑受刑者の処遇」、「公判前拘禁制度」等々極めて広範にわたっている。特に委員会は、代用監獄制度が警察と別個の権限下にないこと、拘禁が有効な裁判所のコントロール下にないこと、取調べに弁護人の立会がなく、取調べの時間にも規制がないこと、弁護人が捜査記録にアクセスできないことに強い関心を示している。


さらに同見解の最後に述べられている勧告では、前述の問題点を国際人権(自由権)規約に従って、法制度並びにその運用を改善するよう勧告しているばかりではなく、ただちに、国際人権(自由権)規約第一選択議定書と拷問禁止条約を批准するよう勧告している。同委員会の勧告は、我が国の解決すべき人権問題の最優先課題である。


我々は、基本的人権を擁護し、社会正義を全うするため、国際人権(自由権)規約委員会見解によって明らかにされた勧告の実現を目ざして全力を尽くして努力すると共に、政府関係当局、国会、裁判所等に対する積極的な働きかけを行う決意をここに表明する。


1993年(平成5年)11月8日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎