坂本弁護士一家救出に向けて

坂本堤弁護士(横浜弁護士会所属・現在36才)が、妻都子さん(現在32才)、長男龍彦君(現在4才)とともに、1989年11月4日、横浜市磯子区洋光台の自宅から行方不明となり、満3年を過ぎようとしている。


この事件は、坂本弁護士一家が、弁護士の業務に関連して、何者かに強制的に居宅から連れ去られた凶悪な拉致事件であり、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の活動を暴力的行為によって妨害する狙いをもったものである。


この3年間、坂本弁護士一家救出に向けて、捜査当局、弁護士、そして多くの市民の方々の懸命の努力が一貫して続けられてきた。しかし、残念ながら現在まで一家の救出はもとより、有力な手掛かりもない状況にあり、事件の風化を危惧する声もあがっている。


救出活動が功を奏さず、もしこの事件が永遠の闇の中に閉ざされるようなことになれば、弁護士の活動が広範囲にわたって阻害され、報道機関等に対する暴力的襲撃事件などとあいまって、市民の人権が危機にさらされるおそれが生じる。


行方不明から満3年目を目前にした今日、当連合会は全国統一行動として、正午を期して全国すべての単位弁護士会会長による声明を発し、一斉に街頭に出て、市民の方々に坂本弁護士一家の救出と、情報の提供をはじめとする協力を訴える。


私達は、どんな不法な暴力にも屈することなく、今後とも民主主義や基本的人権を擁護するためにも、坂本弁護士一家救出に向け総力をあげ、たゆみなく活動する決意を改めて表明するとともに、市民の方々のさらなるご協力と、警察による一層強力な捜査の継続を要請するものである。


右声明する。


1992年(平成4年)10月30日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎