国民生活審議会消費者政策部会の製造物責任制度に関する最終報告発表について

第13次国民生活審議会消費者政策部会は、本日「総合的な消費者被害防止・救済の在り方について」と題して製造物責任制度に関する最終報告を発表した。


報告書は、製造物責任法導入の影響等を含めてあらゆる問題点を検討し、異例といわれる程時間をかけて審議してきた経過を綿々と述べ、問題点は解消したかのように読めるのに、最後の「むすび」で「…さらなる検討を行い、おおむね1年以内にその結果を取りまとめることが必要である。」として結論を先送りした。


当連合会が3年連続実施した「欠陥商品110番」では、我が国には多数の欠陥商品事故が発生し、消費者と企業との相対交渉では救済が得られず、不満を残したままの被害者が大勢存在することが明らかとなった。また、本年5月に全国の弁護士に対してアンケート調査を行ったところ、約550人の弁護士が約1400件の欠陥商品事故の相談をうけ、その32%もが過失や因果関係の立証困難等を主な理由として請求・提訴を断念していることが明らかになった。これらは、欠陥商品被害者の人権救済が極めて不十分であることを示すもので、人権擁護と社会正義の実現を使命とする当連合会としては一刻も放置できない事態である。


最終報告書の結論先送りは国民の人権擁護の観点からは由々しき問題といわなければならない。


と同時に、欠陥商品被害の救済には過失を要件としない世界の潮流にも逆らうもので、国際的非難も受けかねない。


当連合会は、わが国に1日も早く製造物責任法が導入されるよう関係各方面に強く要請する。


1992年(平成4年)10月19日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎