拘禁二法案の国会上程にあたって

本日、政府は、拘禁二法案を三たび国会に提出した。誠に遺憾な事態である。


拘禁二法案は、代用監獄の固定・強化をはかり、弁護人との接見交通に新たな制約を加えるとともに、未決既決ともに規律を優先させている。再提出にあたり、両法案に若干の修正が加えられたが、これらの根本的問題は少しも解消していない。


われわれは、被拘禁者の権利ひいては国民の人権を守る立場から、かかる二法案に反対してきた。とりわけ、昨年1月に廃案となったあとは、国連被拘禁者人権原則の採択にともない法案を抜本的に見直すこと、また政府が国際的NGOから代用監獄や拘禁手続と処遇についての勧告を再々うけ、最近では国連人権委員会に日本の代用監獄も対象となる拘禁に関する調査・勧告部会が設置されるに至った情況などに鑑み、拘禁二法案を白紙にもどすことをくり返し政府に求め、再々提出に強く反対してきた。


他方、われわれ自らも国際的基準に則った新しい拘禁法案の策定作業に着手し、代用監獄の廃止については具体的要綱案を用意している。


政府が内外の批判やわれわれの意見にかかわらず、廃案となった二法案をそのまま提出したことに抗議せざるを得ない。二法案を撤回するか廃案とし、国民各層の意見をとり入れるなど、新たな構想のもとで監獄法改正作業が速やかに再出発することを要望する。


1991年(平成3年)4月1日


日本弁護士連合会
会長 中坊公平