拘禁二法案の廃案にあたって

本日、衆議院が解散し、刑事施設法案と留置施設法案のいわゆる拘禁二法案はついに廃案となった。両法案に一貫して強く反対してきた当連合会はこれを歓迎する。


「近代化」「国際化」「法律化」を標榜してスタートした今回の監獄法改正が、このような結果になったのは、当初からわれわれが批判したとおり、


第一には、「改正」の方向が代用監獄の永続化をはかるものであり、


第二には、刑事施設法案とセットの形で提出された留置施設法案は、実質的に現行の刑事訴訟手続を変質させるものであるばかりか、その立法手続の点でも唐突で非民主的であり、


第三には、被拘禁者の処遇面でも、法案は被拘禁者の権利を侵害するばかりか、法制審議会の答申からさえも著しく後退した内容であったこと、によるものである。


したがって、法案提出以来8年間にわたるわれわれの反対運動とともに、これらに対する国民の関心と批判がかつてなく広まったのである。さらに、国際的基準や先進国の行刑の実際にもとづく比較や批判、代用監獄での虚偽の自白にもとづく死刑に対する再審で無罪の言渡、留置場の収容者に対する不当な処遇をはじめとする警察における不祥事の続出などの情勢も、これら二法案批判の世論を一層高めた。今回の二法案廃案も、このように大きな内外世論の反映である。


かかる経過に照らすなら、政府は、もはや拘禁二法案の提出を当然断念し、あらためて国民各層の意見を十分取り入れた、国際的水準に恥じない全く新たな構想にもとづく行刑法の立案作業に着手すべきである。


当連合会は、監獄法改正に先進的にとりくんできたし、現在も重要な課題として刑事司法の改革にとりくんでいるところであり、引き続き、代用監獄の早期廃止をはじめとする行刑立法立案の活動を進めていく所存である。今後とも、国民の皆様の一層のご理解とご協力をお願いするものである。


1990年(平成2年)1月24日


日本弁護士連合会
会長 藤井英男