長崎市長に対する暴力事件について

昨日、本島等長崎市長が、市庁舎前において短銃で撃たれ、1か月の重傷を負うという事件が発生した。


本島市長が、去る昭和63年12月7日、長崎市議会本会議において、一般質問に答えるかたちで「天皇に戦争責任はあると思う」旨発言したことに関連し、その後、暴力的、脅迫的行為をもって、その発言を撤回させ言論を抑圧しようとする事態が相次いでいたが、昨日の事件は、それが白昼のテロ行為という最悪の事態にまで立ち至ったことを示している。


いうまでもなく、表現の自由は、憲法の保障する基本的人権のうち、最も重要なものの一つであり、当該意見に対する立場の如何を問わず、最大限かつ無条件に保護されなければならない。それは民主主義社会の不可欠の基礎をなすものであり、国民が等しく守り、発展させていかなければならないものである。


しかるに、長崎市長の発言に対する一連の行為は、暴力と脅迫によって言論の自由を抑圧しようとするものであって、基本的人権の尊重及び民主主義を基盤とする憲法秩序に対する重大な挑戦であり、断じて許されるべきものではない。


当連合会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士並びに弁護士会の立場から、今回のテロ行為に対し厳重に抗議し、今後とも表現の自由の確立に向けて一層の努力を続けることを表明するものである。


1990年(平成2年)1月19日


日本弁護士連合会
会長 藤井英男