名古屋高検検事長発言について

報道によれば、去る5月25日、豊島英次郎名古屋高等検察庁検事長は記者会見において、「再審請求が多少、流行しすぎているようにみえる。」と述べたと伝えられている。


当連合会は再審請求人、家族、支援者などとともに、免田、財田川、松山、島田の四死刑再審事件を始めとする少なくない事件について再審開始決定、無罪判決を獲得し、侵害された人権の回復のために、長期にわたり多大な努力を続けている。


誤った裁判によって無実の人を有罪とすることは人権侵害の最たるものである。そして、それを正すためには長期にわたる大変な労苦を必要とし、関係者に深刻な犠牲を強いることはかっての吉田翁事件、最近では故冨士茂子さんの例を引くまでもなく明らかなことである。


それにもかかわらず、誤判について重大な責任を負うべき立場にある検事長が誤った裁判について謙虚に反省するのではなくて、「再審請求が流行しすぎている」などと批判したのが事実とすれば、まことに無責任、不穏当であり、遺憾にたえない。


関係当局が今後いっそう捜査、裁判において人権擁護に徹し、誤りなき裁判を期して努力されることを強く要望するとともに、当連合会としては誤判の防止と救済のために個々の事件取組みの強化はもちろん制度の改善などさらに力を尽くす所存である。


1987年(昭和62年)6月19日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎