第39期司法修習生任官拒否について

最高裁判所は、本年4月3日、裁判官志望の第39期司法修習終了者65名のうち3名を不採用とした。そして、その理由につき、記者会見において、「総合的に判断して採用水準に達していなかったためである」旨説明した。


最高裁判所は、昭和45年の第22期以来、当連合会からの度重なる要望にも拘らず、裁判官の採用基準をまったく明らかにすることなく、ほとんど毎年のように、新任拒否を続けてきた。その多くは、思想・信条・団体加入・修習中の自主的活動を実質的理由とする不公正・不合理なものではないかとの極めて強い疑念が、弁護士会や司法修習生を中心に広まっている。


今回の最高裁判所の説明も、抽象的であり、当事者のみならず、国民を到底納得させるに足る合理的なものとは言い難く、これまでと同様、先に述べた疑念を払拭できないことは誠に遺憾である。


このような状況は、司法修習生、とりわけ裁判官志望者を不必要に萎縮させ、その修習期間中の日常態度及び生活に重大な影響を及ぼしかねず、裁判官に必要な独立不羈の精神を失わせ、裁判官の独立を危うくする可能性を孕むものであって、国民の信頼に応えうる法曹の養成に重大な禍根を残すものである。


当連合会は、不採用の場合にその理由を明らかにしないことは、司法修習生に徒に不安と疑念を抱かせ、結果として司法修習に望ましくない影響を与えることを危惧するものであり、また、裁判官を含む法曹養成について責任があることからも、最高裁判所が、裁判官の採用に当り、その適格性の基準を明示し、本人の求めがあれば具体的理由を開示するなど、国民が納得できる公正で民主的な姿勢を確立し、今後再びかかる疑念を生ずる事態が生じないよう直ちにしかるべき措置をとることを強く要望するものである。


1987年(昭和62年)6月19日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎