山本事件再審請求棄却決定にあたって

本日、広島高等裁判所は、山本久雄氏にかかる再審請求事件について、請求を棄却する決定をしたが、誠に遺憾というほかない。


本件は、昭和3年(旧刑訴時代)の事件であり、戦災により事件記録が焼失しているという困難な状況下における再審請求であった。


にもかかわらず、弁護団提出にかかる3つの新鑑定その他の立証活動に鑑みれば、請求人に対する有罪認定の証拠の中で唯一現存する被害者の死因を「扼殺である」とするいわゆる香川鑑定書が誤鑑定であったことがすでに明らかになっており、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じたものとして、再審は開始されなければならなかった。


しかるに、これらの新証拠に対する正当な評価を行うことなく、頑に請求を斥けた今回の決定は、白鳥・財田川決定以来確立されようとしている再審法理に逆行するものといわざるをえない。


齢88歳を超えて今なお、無実を叫びつづける山本氏の心中はいかばかりか察するに余りある。


当連合会は、本件について再審開始を獲得できるよう今後共全力をあげて支援していくと共に、無辜の救済のための再審法改正の早期実現と誤判の温床たる代用監獄の廃止のため力を尽くしていく所存である。


1987年(昭和62年)5月1日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎