江津事件・後房市氏釈放にあたって

本日、再審請求中の江津事件・後(うしろ)房市氏(78歳)が広島刑務所から釈放された。後氏が、お引受けいただく医療機関で健康の回復に努められ、特別抗告中の再審請求の闘いに自らとりくめる日のくることを期待する。


当連合会は、昭和52年1月以来、江津事件の再審を支援するとともに、後氏の釈放が早期に実現できるようくりかえし関係当局に働きかけてきた。たとえば、未決通算によって無期懲役の法廷仮釈放期間10年が昭和50年6月中旬すでに経過し、再審請求中であることが障害とされてはならないことなどを指摘して仮釈放を要請し、また後氏の高齢と病態の悪化を憂慮して、次善ではあるが刑の執行停止の措置を求めてきた。この間昭和53年5月、当時の北尻得五郎会長が後氏在監中の広島刑務所呉支所を、さらに同59年3月には当時の甲斐緯副会長が同じく広島刑務所を訪ね、また、それぞれ中国地方更生保護委員会をも訪問している。


もとより、後氏の再審を支持し、同氏の釈放を求める関係者の長年の努力も忘れることはできない。


後氏の釈放をわれわれは心から歓迎する。釈放が遅れ病状がすすんだことや、仮釈放ではなく刑の執行停止であることに不満の余地を残しており、刑の執行停止から仮釈放に切りかわることを期待するが、関係当局の今回の決断を評価するものである。


当連合会は、引きつづき後氏の雪冤を目ざして再審請求をすすめていきたい。


1987年(昭和62年)2月3日


日本弁護士連合会
会長 北山六郎