風営法成立にあたって

当連合会は、さる第101回国会に上程された「風俗営業等取締法の一部を改正する法律案」の審議にあたり、この法案は、拡大強化される警察権のもとで、憲法の保障する人権を著しく侵害する事態をもたらす恐れがあることを訴え、国民の広範な論議をふまえて、国会で慎重かつ十分な審議が行われるよう要望した。幸いにして当連合会の要望は、関係各方面で真剣に受けとめられ、論議を広げることができた。


この論議に基づき、衆議院においては一部修正と当連合会の危惧する運用を戒める付帯決議が行われ、ついで参議院においては、参考人の意見を聴取し、「審議の経過にかんがみ国民の基本的人権と警察責務との関係及び法形式等について継続的に調査、検討を行うものとする。政府においても法の運用にあたって慎重を期するとともに、所要の再検討を加えるべきである」との趣旨に基づき、この法律の施行、運用について具体的かつ詳細な12項目の決議を行い、さらに地方行政委員会内に風俗営業等に関する制度及び運用について調査、検討することを目的とする風俗営業等に関する小委員会を発足させた上でこの法律を成立させた。


両院での審議の経過並びに決議は、当連合会の危惧する危険性がこの法案にあることを明らかにするものであり、その具体的整備と運用にあたって慎重な配慮を要することを物語るものといわなければならない。


当連合会は、引続きこの問題についての広範な国民の論議を期待するとともに、当面「下位法令」の整備をはじめとする法制の整備と具体化にあたり、積極的に具体的提言と要望を重ね、運用についても注視を続け、いやしくも改正法の整備と運用が、当連合会の危惧し両院の決議が戒める事態に陥らないことを期してこれに取組み、問題提起者としての責任を全うする所存である。


1984年(昭和59年)8月24日


日本弁護士連合会
会長 石井成一