松山事件再審無罪判決言渡しについて

本日、仙台地方裁判所は、松山事件の斎藤幸夫氏に対する再審裁判において、無罪を言い渡し、直ちに身柄の釈放を命じられた。今、斎藤幸夫氏は、29年間の長い雪冤の斗いの結果、再び自由を獲得し、われわれとともにここに居られる。


日弁連は、今日、この判決を得たことを、本人はもとよりご家族の皆さん、松山事件対策協議会を中心とする全国の支援者の方々、そして弁護団と喜びをともにするとともにこれらの人々のこれまでの労苦を心からねぎらうものである。


この判決で免田事件、財田川事件と死刑再審三事件について無罪判決が出そろったが、このことは、死刑という極刑の確定判決にすら誤判があったとの証明にとどまらず、現行裁判制度の中に誤判の原因が存在し得るということであり、わが国刑事裁判史上例を見ない極めて重大な問題の提起であって、司法関係者の責任は極めて重大である。


検察当局は、斎藤氏の青春のすべてを含む29年の人生を奪ったことに想いを致し、本日の無罪判決を謙虚に受けとめ、この判決を1日も早く確定させると同時に、刑事裁判に対する国民の信頼の回復のため、検察の在り方についても率直に反省されることを希望するものである。


司法の一翼を担う日弁連としても、このような事態を深刻に受けとめ、さらに島田事件をはじめとする再審諸事件についても全力をあげて取組んでいく決意であるが、これらの早期救済にとどまることなく、誤判原因の一つである代用監獄の廃止、接見交通権の確立、自白偏重の弊害を除去するための適切な弁護活動の実現、裁判不提出記録の弁護人に対する不開示の問題等、捜査、裁判の制度や運用の改善についても積極的に提言し、その実現のための努力も続けると同時に、不備であることが明らかとなった再審法改正のための活動に今後も全力を注ぐ所存である。


1984年(昭和59年)7月11日


日本弁護士連合会
会長 石井成一