財田川事件再審無罪判決にあたって

谷口繁義氏は、本日、高松地方裁判所において財田川事件の再審無罪判決を得た。谷口氏は、事件発生1ヶ月後の昭和25年4月逮捕以来、一貫して無実を訴え続けてきた。


日弁連は、昭和51年から同氏の再審に取組んできたが、本日の判決により同氏の無実がようやく明らかとなり、本人、家族、弁護人、支援の方々の労苦をねぎらい、喜びをともにするものである。


検察当局は、この判決を謙虚に受止め、直ちに谷口氏の身柄を釈放し、かつ、控訴を断念して判決を確定させるべきであり、また、今後かかる事態を生ぜしめないように、公益の代表者として誤判防止に努めることが、同氏へのせめてもの償いであり、同時に司法に対する国民の信頼を回復するゆえんでもあろう。


先の免田事件に続いて、死刑判決の誤りが再度確認され、さらに松山事件についても近く無罪判決があるものと期待されているが、これは、我が国刑事裁判史上例を見ない極めて重大な事態である。


法曹の一翼を担う日弁連としても、この事態を深刻に受止め、ふたたび誤判を繰返さないよう、その原因の一つである代用監獄の廃止など、捜査と裁判の制度や運用の改善について積極的に提言し、その実現に最大の努力をするとともに、引続き、無罪を求めて長期間の苦闘を余儀無くされている再審諸事件の救済と、欠陥の明らかとなった再審法の改正のための活動に今後とも全力を注ぐ所存である。


1984年(昭和59年)3月12日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義