免田栄氏の再審無罪判決について

34年の長きにわたって、日夜処刑の恐怖におびえながら、無実の証明に苦闘した免田栄氏が、本日ようやく無罪判決を得た。


昭和35年以来事件の調査に着手し、免田氏を支援して再審の狭き門を押し開いてきた日弁連は、この判決を高く評価し、本人をはじめご家族・多くの支援の方々・弁護団の労苦を心からねぎらい、喜びを共にしたい。


それにしても、わが国の裁判が無実の者に死刑を科し、かけがえのない人権を踏みにじってきたことは、わが司法の汚点であり、司法の一翼を担う者として深く遺憾の意を表するものである。法務・検察は、これ以上免田氏の苦しみを長びかせないよう、本日の無罪判決を謙虚に受け止め、直ちに免田氏の身柄を釈放し、且つ控訴を断念して判決を確定させるべきである。それが免田氏へのせめてもの償いであり、司法に対する国民の信頼を回復するゆえんでもあろう。


確定死刑判決に対して再審で無罪判決が言い渡されたのは、わが裁判史上はじめてのことであり、財田川、松山、さらに島田事件へ続くものと確信できる状況にある。われわれは、この重大・深刻な事態を直視し、現在なお再審の開始や無罪判決に向けて苦闘を続けている諸事件の早期救済をはかるとともに、欠陥の証明された再審法の改正を実現しなければならない。


また、多くの冤罪事件の経験と教訓にかんがみ、再びこのような誤判を繰り返さないよう、その原因となった捜査と刑事裁判の制度や運用の問題点について積極的に提言するなど、今後も日弁連は最大の努力をつづける所存である。


1983年(昭和58年)7月15日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義