牟礼事件特別抗告申立棄却決定にあたって

昭和58年11月30日、最高裁判所第一小法廷は、佐藤誠氏にかかわる第7次再審請求棄却決定に対する特別抗告申立について、これを棄却する旨の決定をした。


佐藤誠氏にかかわる再審請求事件、いわゆる牟礼事件は共犯者の「自白」を唯一の証拠として死刑の言渡しがなされているところ、共犯者の「自白」は確定記録中の物証にも反し、その信憑性には大きな疑いがある。また、第6次再審請求中、事案解明上重要な物証である「乳バンド」などが裁判所において焼却されるなどのことがあった。したがって、牟礼事件にあっては、単に形式的な審理にとどまらず、公判不提出記録の取寄せ、弁護団への開示、その取調べなど実質的審理をとげるべきであった。このような精神は免田、財田川、松山など再審開始決定のなされた各事件において、すでに示されているところである。


しかるに、牟礼事件に関する今回の決定は、このような再審手続本来の精神を没却し、形式的な審理のみによってなされたものであり、誠に遺憾である。


当連合会は、誤った裁判に苦しむ人々の救済のため、よりよき再審制度の実現に向けて今後とも一層力を尽す所存である。


1983年(昭和58年)12月3日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義