留置施設法案・刑事施設法案の廃案を求める

1.

本日、警察庁立案の「留置施設法案」が、「刑事施設法案」と共に国会上程の閣議決定がなされるときいている。


「留置施設法案」は重大な人権侵害の危険性を含むものであり、国会上程には反対であって、これを廃案とするよう求めるものである。


  1. 捜査機関が被勾留者の身柄を管理する代用監獄は、自白の強要等重大な人権侵害の事実があり、今なおそのおそれは顕著である。法制審議会が答申した「監獄法改正の骨子となる要綱」においても、その廃止を目指して漸減を謳っているゆえんである。しかるに本法案は代用監獄について警察独自の法制を敷くと共に、附則により地方自治法、警察法等を改訂して代用監獄に関する警察の権限を明確にしており、明らかに代用監獄の恒久化をはかるものであって容認できない。また代用監獄における被勾留者の処遇について、刑事施設法を準用するというのであれば、同法をもって足り、敢えて別法を作る必要はない。
  2. 被逮捕者の処遇については、捜査官である警察が施設管理を理由として弁護人選任権・接見交通権を不当に制限し、拘束具の使用などが自白強要の具に供されるおそれが極めて大きい。

よって、本法案は廃案とし、あらためて民主的な立法作業を経ることが必要である。


2.

「刑事施設法」案は、現行法に比して相当の改善のあとがみられるものの、代用監獄の存続を定めているほか、第三者機関の設置、善時制の採用など、日弁連の提案を無視し、加えて「留置施設法案」に引きずられて、弁護人の接見交通権に対する制限を前記法制審の「要綱」よりも強化するなど問題点が多い。今後の国会審議において、これらの欠陥を是正することが必要である。


1982年(昭和57年)4月27日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義