護送中の被疑者に対する警察官の発砲射殺事件について

昭和56年12月12日、水戸地方検察庁構内において発生した護送中の被疑者に対する警察官の発砲射殺事件について、昨日、水戸地方検察庁は、警職法第7条に当り刑法第35条に当るとして当該警察官を不起訴処分とした。


しかしながら、当時の状況は、鹿島警察署の護送用の車内において、被疑者は後部座席に左右を2人の警察官に挟まれ両手錠及び捕縄をなされた状態にあったものである。


当該警察官は、第1発目は席に向けて威嚇射撃をし、第2発、第3発目は、いわゆるダブルアクションを行い連続射撃をしている。即ち、自由を奪いながら至近距離から連続して被疑者に対して2発発射した行為である。


日弁連は、右警察官の行為が、警職法第7条に定める武器使用相当の理由がある場合に当るかどうか、また、その事態において合理的に判断される限度において武器を使用することができるという規定に照らし、甚だ疑問がある。また、被疑者が、仮に、警察官に抵抗したとしても、これを防ぐにつき他に手段がないと信ずるに足る相当な理由がある場合に限って武器使用が許されるのであるから、前記状況に鑑みて、過剰防衛の疑いが濃厚である。


日弁連は、昭和56年12月28日、検事総長に対し、要望書により、伝えられる事実関係よりみて正当行為とするには重大な疑問があり、基本的人権擁護の立場から厳正かつ公正なる捜査を遂げ、事案の真相を国民の前に明らかにし、納得のゆく処分を行うことを強く要望したが、今回の不起訴処分についてもわれわれの疑問を払拭することはできない。


日弁連としては、今後、速かに事実を調査した上、然るべき措置をとる所存である。


1982年(昭和57年)11月20日


日本弁護士連合会
会長 山本忠義