江津事件再審請求棄却に関する談話

本日、後房市氏の再審請求を棄却した広島高等裁判所松江支部の決定はまことに遺憾である。


本件では、被害者が犯行日とされた翌日以降にも生存していたことを証言した2名の証人、被害者の傷は「ガンヅメ・鍬またはこれに類する」鈍器ではなく、後氏に結びつく余地のない鉄製火かき棒であるとする明確な科学的鑑定などが提出された。新たなこれら証拠と従前の証拠を総合すれば、後氏に対する有罪判決は到底維持できず、すみやかに再審は開始されねばならなかった。


しかるに決定は、あやふやな確定判決の事実認定を無批判に追認し、右新証拠の重要な意味を正当に理解せず、請求を棄却したのである。同時にこの決定は、最高裁白鳥決定以来の再審の流れに逆行し、冤罪に泣く者の人権の上に確定判決の権威をおく不当なものである。


後氏の再審開始のため努力してきた我々は、この間違った決定を正すための一層の活動を続けるとともに同氏の早期の釈放を求めて全力を尽くすものである。


1979年(昭和54年)3月2日


日本弁護士連合会
会長 北尻得五郎