少年法改正の実質審議終了に関する声明

法制審議会少年法部会は、昨日植松部会長試案の第3項ないし第5項を採決し、試案全体の審議を実質的に終了した。


そもそも少年法のあり方は、捜査当局の規制を排除し、少年の健全育成の視点できめ細かい対応を行うことが理想とされ、現行少年法もかかる視点での一層の充実、強化が望まれていたのであった。


しかるに、試案の内容は、かかる問題に応えることなく警察・検察の権限強化を軸に、少年の成長と人権を犠牲にして治安強化をはかろうとする少年法改正要綱(昭和45年法務省提案)の骨子を生かしたものでその審議は真の問題点の解明を許さず、早急に結論を出すことにのみきゅうきゅうとし、昨年12月にはその1、2項の強行採決を行い、小委員会設置など審議運営の民主的な保障を求めるわれわれの意向を無視して審議を続行し、今回の採決にいたったものである。


少年法の改正は、次代をになう青少年の成長と人権に深くかかわり、将来の国や社会のあり方を左右するもので、国民の総意を結集し、慎重な上にも慎重な審議を重ねてなされるべきものである。


今回の試案の採決はかかる当然の要請に反し偏った構成の部会で、充分な審議を尽さぬまま審議を実質的に終了したもので極めていかんである。


また、われわれはかかる「改正」が少年の健全育成に悪影響をおよぼすことは極めて明白であり、かかる改正に対しては今後ともあらゆる機会をとらえてその実現を阻止するため力強い運動を続けてゆく決意である。


1976年(昭和51年)10月19日
日本弁護士連合会会長 柏木博