伊江島米兵発砲事件の裁判権放棄に関する談話

1.

報道によれば政府は5月6日伊江島米兵発砲事件について対米外交折衝の結果裁判権の放棄を決定したと伝えられ、その理由として1事件を未解決にしておくことは、加害者の処罰や被害者の補償の面からも好ましくない。2米兵の当該行為はさほど悪質なものとは認められない。3米側は遺憾の意を表明し、適正な処置をとることを約束した等の事情をあげている。


2.

本件は、沖縄県伊江村の米軍演習場において、米兵が付近住民とともに草刈りをしていた日本人青年を車輛で追いかけ背後から約15メートルの至近距離で発砲し、同人に全治3週間の重傷をおわせるという沖縄県民の人権を全く無視した行為であるにもかかわらず、政府が「それほど悪質なものとは認められない」として我が国の裁判権を放棄したことは、政府自ら沖縄県民の人権を著しく軽視したものとして到底容認することができない。


ここに日本弁護士連合会は政府に対し強く遺憾の意を表わすものである。


1975年(昭和50年)5月9日


日本弁護士連合会
会長 辻誠