沖縄復帰2周年にあたって

本年5月15日を以て、永年異民族の支配のもとに苦しんできた沖縄の施政権返還、祖国復帰満2周年を迎える。2年前の復帰にあたって当日本弁護士連合会は会長談話を以て「復帰は人権回復であり、あるべき姿としての日本国憲法のもとへの復帰でなければならない」と、当連合会の従来の立場を更に強調し、この観点から(1)基地の存在(2)軍用地問題(3)軍犯罪(4)基地災害、演習被害(5)損害賠償請求権(6)労働問題(7)売春問題(8)産業公害(9)地方自治の各点についての要望提言を公けにした。


当連合会は、復帰後も沖縄問題にとりくんできたが、本年8月24・5の両日にわたり、沖縄那覇市において、「復帰後の沖縄の人権問題」について憲法の精神から再点検するため総合的なシンポジウムを開催することとした。このため当連合会では今日まで2回にわたり沖縄弁護士会会員を含めた調査団を構成し、基地、請求権、交通、都市問題、労働農民問題、司法、軍犯罪、医療、福祉、売春、麻薬、教育、青少年問題、基地公害、開発、自然保護の諸点について調査を実施した。


本土なみといわれた基地の返還もその対象は極めて部分的であり、ベトナム戦後却って演習が強化されるなど基地の機能はいぜん変りなく、米兵による少女ら致事件が調査団滞在中に発生するなど、米軍人・軍属の犯罪もいぜん跡を絶っていない。麻薬・売春問題も基地の存在と密接なかかわりをもっている。医療問題等県民の福祉面についても一日も放置できない急迫状態にある。さらに沖縄の自然は予想以上に破壊されており、乱買収は離島にまで及び開発・環境問題は深刻な事態にたちいたっている。


重ねて当連合会は、沖縄の復帰後満2年を経て今日もなお、これら困難な人権諸問題に苦しんでいる現状を遺憾とし、平和と基本的人権尊重を基調とする日本国憲法の完全実施による沖縄県民の人権回復の日まで、不断の努力を続ける所存である。


1974年(昭和49年)5月14日


日本弁護士連合会
会長 堂野達也