UNCITRAL2006年改正モデル仲裁法を反映した法整備要綱試案

 

2019年6月21日
日本弁護士連合会

 

意見の趣旨

日本弁護士連合会は、仲裁法及び民事執行法等を、以下の要綱試案のとおり、国際連合国際商取引法委員会(以下「UNCITRAL」という。)2006年改正モデル仲裁法(以下「2006年モデル仲裁法」という。)を反映したものに改正することを提案する。



要綱試案

(1) 債務名義を追加すること


民事執行法第22条に「仲裁廷(ただし、仲裁地が日本にある場合に限る。)が命じた暫定措置又は保全措置(ただし、確定した執行決定のあるものに限る。)」を加える。



(2) 仲裁廷の命じることができる暫定措置又は保全措置の定義規定を置くこと


仲裁法に、以下のとおり暫定措置又は保全措置の定義を置く。

暫定措置又は保全措置とは、仲裁判断の形式によるか又はその他の形式によるかを問わず、あらゆる一時的な措置であって、紛争を終局的に解決する仲裁判断をする前の時点において、仲裁廷が当事者に以下の措置を命ずるものをいう。
① 紛争の解決まで現状を維持し又は回復すること。
② 現在の若しくは切迫した損害又は仲裁手続の妨害を防ぐ行為をすること、又はそれらを生じさせる恐れのある行為をやめること。
③ 将来の仲裁判断を実現するために必要な資産の保全手段を提供すること。
④ 紛争の解決に関連しかつ重要となりうる証拠を保全すること。



(3) 仲裁廷の暫定措置又は保全措置についての執行決定申立て規定を設けること


仲裁法に、仲裁廷(ただし、仲裁地が日本にある場合に限る。)が命じた暫定措置又は保全措置に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定の申立てをすることができる旨の規定を設ける。



(4) 仲裁廷の暫定措置又は保全措置についての執行決定拒否事由の規定を設けること


仲裁法に、(3)の執行決定申立てについて,執行決定申立て却下事由を以下のとおり規定する。

①  仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
仲裁合意が、当事者の合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、日本の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
当事者が、仲裁人の選任手続又は暫定措置若しくは保全措置の手続において、日本の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
当事者が、暫定措置又は保全措置の手続において防御することが不可能であったこと。
暫定措置又は保全措置が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
仲裁廷の構成又は暫定措置若しくは保全措置の手続が、日本の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
暫定措置又は保全措置を講ずるについて仲裁廷が相当の担保を提供すべきことを命じた場合において、当該担保が提供されたことの証明がないこと。
暫定措置又は保全措置が仲裁廷により取り消され、又はその執行を停止されたこと。
暫定措置又は保全措置が日本の法令によって執行することができないものであること。
仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
暫定措置又は保全措置の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。

 


(5) その他の関連規定の整備


上記のほか、仲裁廷が発する暫定措置又は保全措置の執行決定に係る申立ての移送、審尋の要否、即時抗告の可否等所要の関連規定を、仲裁判断の執行決定に係る関連規定(仲裁法第46条2項ないし10項)に倣って、整備する。



         

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